インド政府は、2022年までに太陽光・熱発電1億kW、風力6,000万kW、バイオマス1,000万kW、小水力500万kWの導入目標を掲げており、世界でも有数な再生可能エネルギー導入量を目指して、電力系統の強化策を進めている。州内・州間送電系統の強化や再生可能エネルギーの発電量の予測や監視を行う再生可能エネルギー管理センター(REMC)の設置などの取り組みを進めているが、日本の有する蓄電池とその材料に関する優れた技術に対して注目している。
出力変動の大きい太陽光や風力発電の需給バランスを改善するための大規模蓄電システムでは、単位電力当たりの蓄電デバイスコストの低減、長寿命性、安全性が求められる。
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、インドにおいて系統用蓄電システムの実証事業の詳細な計画を作るための実証前調査(FS)を開始することになった。既に民間では、三菱商事と、米国大手独立系発電事業者のAES Corporation、インドタタグループのTata Power Delhi Distribution Limited(タタ・パワー・デリー・ディストリビューション・リミテッド:TPDDL)の3社間で1月13日、蓄電システム運用の実証事業実施で基本合意が交わされた。
蓄電池に関する技術では、東北大学が開発した安価で大容量なレドックスフローキャパシタは、表1のような特性を有しており、大規模蓄電設備向けにエネルギー密度の倍増(約2.5倍)に成功して、スマートグリッド用大規模蓄電システムへの産業応用が期待される(2017年3月)
表1 各エネルギーデバイスの性能比較
|
容量 |
入出力特性 |
材料コスト |
安全性 |
---|---|---|---|---|
レドックスフローキャパシタ |
○ |
◎ |
◎ |
◎ |
フローキャパシタ |
△ |
◎ |
◎ |
◎ |
レドックスフロー電池 |
○ |
△ |
○ |
◎ |
ナトリウム・硫黄電池 |
◎ |
△ |
○ |
△ |
リチウムイオン電池 |
◎ |
△ |
△ |
△ |
出典:東北大学
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20161215_05web.pdf
参考資料:
• NEDOニュースリリース「インド政府と系統用蓄電システム分野で協力―実証前調査(FS)の公募を開始へ―」
http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100702.html
• 東北大学「安価で大容量なレドックスフローキャパシタの作製に成功-大規模蓄電用途に有力な新設計-」
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2016/12/press20161215-05.html
• 三菱商事「インド・デリー配電系統安定化のための蓄電システム実証プロジェクトについて」
http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/pr/archive/2017/html/0000031740.html
• レドックスフロー電池の国際標準化審議スタート(トピックス2014年7月)
https://www.asiabiomass.jp/topics/1407_04.html
- 2019年改正FIT
- 日本企業の技術を活かしタイでバイオエタノール製造に着手
- アジア・オセアニア地域の海洋エネルギー利用
- インドで送電安定化を図るための蓄電システム導入
- 2017年度の再生可能エネルギー予算案