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再生可能エネルギーキャリアとしての水素化合物

再生可能エネルギーキャリアとしての水素化合物

化石燃料依存を低減し、CO2を削減することは重要な課題であり、燃焼によりCO2を発生せず、再生可能エネルギーからの製造が可能である水素を利用することは、エネルギー供給源の多様化の観点からも重要である。2014年度から内閣府では、戦略的イノベーション創造プログラムの一つとして、エネルギーを輸送・貯蔵する手段として水素およびアンモニア、有機ハイドライド等の水素化合物をエネルギーキャリアと位置づけ、その研究開発を行っている。

再生可能エネルギーの輸送の例として、アルゼンチンのパタゴニア地方の風力発電や、ロシアの水力発電から水電解で製造した水素を、日本まで大陸間を船舶で輸送することが検討されている。このような開発を行っているのは日本だけであり、将来的には自国にエネルギー資源を持たない国への展開を視野に入れている。

表1にエネルギーキャリアの比較を示す。常温で液体なのは有機ハイドライドであり、ガソリンと同様のケミカルタンカーで輸送できる。液体水素とアンモニアは冷却して液体にするため、LNG船で使われているような断熱タンクが必要な上、液体水素の場合は更に極低温に保つ必要がある。アンモニアの体積当たり水素密度は液体水素よりも大きいため、輸送効率が優れている。

エネルギー生産地では、水素をトルエンと反応させメチルシクロヘキサンにする技術や、水素と窒素からアンモニアを高効率に合成する技術が必要である。アンモニアの合成法として確立されたハーバー・ボッシュ法があるが、新しい方法として電解合成法が研究されている。

エネルギーの消費地では、水素は燃料電池を用いて電気に変換できるが、水素を直接燃料にして動力に変換するタービンの開発が始められている。

メチルシクロヘキサンでは水素を取り出すために脱水素反応が必要で、水素とトルエンに分解される。このトルエンはエネルギー生産地に戻され再利用される。アンモニアは、燃焼させてもCO2は発生しないので、燃料としてタービンで燃やして発電する方法が検討されている。2015年9月には、産業技術総合研究所が、メタンーアンモニア混合ガスと100%アンモニアを燃料にガスタービンを回して41.8kWの発電に成功している。この例のように日本の独自技術が確立されることが期待される。(2015年12月)


表1  エネルギーキャリアの比較

  液体水素 有機ハイドライド
(メチルシクロヘキサン
C7H14)
アンモニア
分子量 2.016 98.19 17.03
沸点(K) 20.3 374 240
密度(g/cm3 0.0706 0.769 0.682
質量水素密度(mass%) 100 6.16 17.8
体積あたり水素密度
(kg/100L)
7.06 4.73 12.1
生産地で必要とされる技術 水素液化設備が必要 トルエンと水素を反応させてメチルシクロヘキサンを生成 水素と窒素からアンモニアを合成
需要地で必要とされる技術 蒸発させてガス化 メチルシクロヘキサンを脱水素して、水素を分離 アンモニアをそのまま燃焼しエネルギーを取り出す
関連企業 液体水素タンカー:川崎重工業㈱
水素専焼タービン:川崎重工業㈱
メチルシクロヘキサン合成・脱水素技術:千代田化工建設㈱ アンモニア電解合成法:アイ‘エムセップ㈱、電力中央研究所
アンモニアタービン:産業技術総合研究所

出典:各種資料による

 

参考文献:
• 戦略的イノベーション創造プログラムHP
http://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/
• 2015年度 NEDO新エネルギー成果報告会 燃料電池・水素分野予稿集
• 産業技術総合研究所プレスリリース
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2015/pr20150917/pr20150917.html
• 再生可能エネルギーの出力変動対策としての水素利用(トピックス2014年3月)
http://www.asiabiomass.jp/topics/1403_04.html

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